「賃上げしてください」と言われる。でも、原資がどこにもない。
2026年、多くの中小企業の経営者が直面しているのはそういう状況だ。
大企業が5%超の賃上げを連発するニュースを横目に、「うちには無理だ」と感じながらも、賃上げしなければ人が辞める。
賃上げすれば資金が尽きる。そんな袋小路に追い込まれている。
実際、人件費高騰を原因とする倒産は、2022年の7件から2025年には152件へと、わずか3年で22倍に膨らんだ(東京商工リサーチ、2026年1月発表)。
2026年1月単月だけで見ると、前年同月比3.1倍という異常な急増ぶりだ。
なぜ中小企業は賃上げできないのか。
そして、どうすれば乗り越えられるのか。5つの構造的な理由と、採用以外の打開策を整理する。
理由1:賃上げ原資を作る「価格転嫁」が機能していない
賃上げの原資は、利益から生まれる。
利益を増やすには、コスト増加分を売値に転嫁しなければならない。
しかし現実は厳しい。
コスト増加分を完全に(10割)価格転嫁できている企業は、全体のわずか3.8%にすぎない(日本商工会議所LOBO調査、2025年10月)。
労務費に絞ると、転嫁率は32〜50%にとどまる(帝国データバンク・中小企業庁、2025年調査)。
つまり、賃上げしても、そのコストを売値に乗せられていない企業が圧倒的多数だ。
価格転嫁が進まない理由は単純で、「取引先から断られるから」「競合に仕事を取られるから」という力関係の問題だ。
特に下請け構造の深い業種ほど転嫁が難しく、運輸・建設・医療福祉は全業種の中でも最も低い水準にある。
→ 詳しくは:[価格転嫁できない中小企業が9割超の現実]
理由2:大企業との賃上げ格差が固定化されている
2025年春闘の結果、大企業(300人以上)の賃上げ率は5.33%、中小企業(300人未満)は4.65%だった(連合、2025年7月最終集計)。
0.68ポイントの差は小さく見えるが、問題は「縮まっていない」ことだ。
さらに深刻なのは、連合の集計対象が労働組合のある企業に限られるという点だ。
従業員99人以下の企業の労組組織率はわずか0.7%(厚生労働省、2024年)。労組のない中小企業の実態の賃上げ率は3〜4%台前半にとどまるケースが多く、大企業との実質的な格差はさらに広い。
2026年春闘で連合は中小企業に「6%以上」の賃上げを求めている。
しかし5%以上の賃上げを「予定している」中小企業は35.5%にすぎない(東京商工リサーチ、2026年2月)。要求と現実の間に、大きな断絶がある。
→ 詳しくは:[大企業と中小企業の賃上げ格差が広がる理由【2026年春闘】]
理由3:業績が改善していないのに賃上げを強いられている
中小企業が賃上げする理由のトップは「従業員の離職防止(77.5%)」だ(東京商工リサーチ、2025年2月)。
「業績向上分の還元」はわずか33.3%、「業績見通しの好転」に至っては7.6%にすぎない。
つまり、儲かっているから上げるのではなく、辞められたくないから上げている。
これが「防衛的賃上げ」の実態で、2025年12月時点では中小企業の68.8%がこの状況にある(日本商工会議所、2026年2月)。
業績が改善しないまま人件費だけが増えれば、いずれ限界が来る。
「賃上げ疲れを感じている」と回答した企業はすでに77%に達している(エデンレッドジャパン、2025年)。
→ 詳しくは:[人件費高騰倒産が前年の3倍に【2026年1月最新】]
理由4:最低賃金の引き上げが「強制賃上げ」として機能している
春闘とは別に、最低賃金の引き上げが毎年秋に発動される。
2025年度の最低賃金は全国加重平均1,121円(前年度比+66円、引き上げ率6.3%)で、全都道府県が初めて1,000円を超えた(厚生労働省、2025年9月)。
政府は「2020年代中に全国平均1,500円」という目標を掲げており、達成には毎年7.3%程度の引き上げが必要だ。
この目標に「対応できない・困難」と答えた中小企業は74.2%にのぼる(日本商工会議所、2025年3月)。
7.3%の引き上げに「対応可能」と回答した企業は、わずか1.0%だ。
賃上げが「したい」ではなく「しなければならない」構造になっている。
最低賃金の改定に対応した企業のうち、「具体的な対応が取れず収益を圧迫している」が31.4%で最多という現実がある。
→ 詳しくは:[最低賃金1500円に74%の中小企業が対応不能【調査】]
→ あわせて読む:[最低賃金1,500円時代、中小企業はどう生き残るか]
理由5:賃上げできないと人が辞め、さらに経営が悪化する
賃上げを見送った企業で何が起きるか。答えはシンプルで、従業員が辞める。
2025年の人手不足倒産397件のうち、「従業員退職」を直接の原因とするものが前年の1.5倍に増加した(東京商工リサーチ、2026年2月)。
賃金が大企業より低い企業から、優秀な人材が流出していく。
人が抜けると業務が回らなくなり、売上が落ちる。売上が落ちると、さらに賃上げが難しくなる。
この負の連鎖が、「賃上げ疲れ倒産」の正体だ。
特に中小企業において、有資格者や熟練の営業担当が1人辞めるだけで、事業継続が困難になるケースが後を絶たない。
従業員10人未満の小規模企業が人手不足倒産全体の77%を占めているのは、そのためだ(帝国データバンク、2026年1月)。
では、どうすればいいのか
賃上げの連鎖から抜け出すには、「人を増やす・給料を上げる」以外の選択肢を持つことが必要だ。
具体的には2つの方向がある。
1つは「業務の自動化で、既存の人員でより多くの仕事をこなせる仕組みを作る」こと。
事務処理や報告業務などの定型作業を自動化できれば、人件費を増やさずに生産性を上げられる。
結果として賃上げの原資が生まれやすくなる。
もう1つは「ホームページを営業マン代わりにして、問い合わせを増やす」こと。
営業担当を採用・維持するコストは年間550万円以上かかる。
ホームページが24時間稼働して問い合わせを取ってくれれば、採用コストをかけずに売上を伸ばせる。
賃上げ問題の本質は、「人件費が上がる速度」と「売上・生産性が上がる速度」のギャップだ。
採用で解決しようとすればコストが重なるだけだが、ITや仕組みで解決すれば、そのギャップを縮めることができる。
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