経営課題のヒント

属人化とは?|中小企業が放置してはいけない理由

中小企業の夕暮れのオフィス。深刻な表情の女性従業員が、マニュアルがなく特定の担当者にしか分からない「属人化」業務を一人で抱えている様子。デスクには「佐藤さんしか知らない」「マニュアルなし」「システムパスワード?田中さんに聞いて」といった付箋が貼られた大量の書類があり、業務のブラックボックス化と経営リスクを象徴。記事が伝える属人化解消の必要性と具体的な対策を強調するアイキャッチ画像。

「あの人がいないと、この仕事が回らない」。

そんな場面、あなたの会社でも起きていませんか?

これが属人化です。

70.5%の職場で属人化業務が存在するというデータがあります(taiziii、管理職200名調査、2025年)。

一見よくある話に見えて、実は経営を揺るがすリスクになっている。

この記事では、属人化とは何か、なぜ中小企業で深刻になるのかを解説します。

属人化とは何か

属人化とは、特定の業務が特定の人だけの知識や経験に依存している状態のことです。

端的に言えば「その人がいないと仕事が止まる」状態です。

手順が頭の中だけにある、マニュアルがない、引き継ぎができない。

このような状態が積み重なって、組織の中に見えない弱点が生まれていきます。

属人化が起きやすい業務の種類

中小企業の現場で特によく見られる属人化のパターンは以下の通りです。

業務カテゴリ具体例
顧客対応特定の担当者しか取引先の状況を把握していない
経理・財務月次処理のやり方を一人しか知らない
システム管理パスワードやサーバーの設定を誰も知らない
製造・技術熟練スタッフの感覚に頼った品質管理
営業担当者の人脈で成り立っている顧客関係

どれも「うちにある」と感じた方は多いのではないでしょうか。

「依存」と「専門性」は何が違うのか

「それは専門家への依存ではないのか」と聞かれることがあります。

専門性と属人化は別物です。

専門性とは、高度なスキルを持つ人が担当する状態です。

一方、属人化とは「他の人が代われない状態」です。

専門家が急に辞めたとき、仕事が止まる可能性があるなら、それは属人化と言えます。

なぜ属人化してしまうのかについては、[なぜ属人化してしまうのか?]で詳しく解説しています。

「うちの会社のこと?」と思う、よくある光景

正直に言うと、属人化を「わかってはいるけど、まあ大丈夫」と思っている経営者は多いです。

相談で多いのが「うちも属人化はあるけど、今のところ特に問題は出ていない」というケースです。

でも少し掘り下げると、リスクが見えてくることがほとんどです。

こういうこと、ありませんか?

  • 経理担当が有給を取ると、誰も請求書を出せない。本人も休めないと思っていて、実際に何年も有休を使えていない
  • ベテランの営業スタッフが退職の意向を示した瞬間、「あの取引先はどうなる?」と頭が真っ白になった
  • システムのパスワードを聞いたら「自分のメモ帳に書いてある」と言われて、そのメモ帳が会社のどこにあるかも本人しか知らない

これらは笑えない話ではなく、実際によく聞く話です。

属人化の本当の怖さは「問題が見えにくい」ことにあります。

普段は回っているから気づかない。

でも、何かのきっかけで一気に表面化します。

その「何か」が退職であり、病気であり、経営者自身のことであることも多い。

属人化が退職リスクとどうつながるかは、[属人化が退職リスクになる理由]で詳しく取り上げています。

また、「属人化は本当に悪いことなのか」という問いについては、[属人化は本当に悪いのか?]で整理しています。

「属人化を完全になくすべきだ」と言いたいのではありません。

でも「放置していい」とも言えません。どこに問題があるかを把握する、それだけでも全然違います。

データで見る属人化の実態

数字で確認してください。

7割以上の職場で属人化が存在する

属人化とは、決して一部の特殊な会社の話ではありません。

taiziii(2025年)が実施した管理職200名への調査では、70.5%の職場で属人化業務が存在することが明らかになっています。

内訳は「非常に多い」28.5%、「ある程度ある」42.0%。「まったくない」と答えたのはわずか10%です。

つまり、属人化はほとんどの会社で起きている、普通の状態と言えます。

さらに、中小企業の25%が「業務知識の属人化」を主要な経営課題として挙げています(デジタル・ナレッジ、n=100、2021年)。

この数字は他の経営課題の中で最多でした。

主担当者と代替者の差は1.8倍

属人化の具体的なコストを示すデータがあります。

東京海上ディーアールの調査では、同じ業務を担当する主担当者と代替者の間に、作業時間に約1.8倍の差があることがわかっています。

つまり、主担当者が抜けた後、代替者が同じ仕事をこなすには8割増しの時間がかかるということです。

人員は変わらないのに、仕事量が増えた状態になる。

この状態が続けば、残った人たちも疲弊していきます。

製造業では、技術継承に問題があると答えた企業が86.5%にのぼっています(経済産業省)。

製造業に限らず、「熟練者の感覚」に頼った仕事はどの業種にも存在します。

放置すると退職型倒産につながる現実

もう少し踏み込んだデータをお伝えします。

帝国データバンクの2024年調査によると、従業員退職型倒産が87件と過去最多を記録しました(前年比30%増)。

退職による属人化業務の喪失が、そのまま会社の存続を脅かした事例が増えています。

また、後継者不在率は50.1%(帝国データバンク、27万社調査、2025年)。

これは経営者自身への属人化です。

「自分がいないと会社が動かない」という状態が、日本の中小企業の半数に存在します。

離職率は15.4%(厚生労働省、2023年)。

単純計算で約7年に一度、全員が入れ替わる速度です。

属人化した状態で人が入れ替わり続ければ、知識の喪失が積み重なっていきます。

属人化を放置するとどうなるかの詳しい解説は、[属人化を放置するとどうなる?]をご覧ください。

まとめ

属人化とは、特定の業務が特定の人だけに依存している状態です。

70.5%の職場に存在し、主担当者と代替者の間には1.8倍の作業時間差が生まれます。

後継者不在率50.1%、退職型倒産87件という数字が示す通り、放置すれば経営リスクに直結します。

大事なのは「今、自社のどこに属人化があるか」を把握することです。

完全に排除するのは難しいし、そこまで急ぐ必要もない。

まずは「誰かが急にいなくなったら止まる業務はどれか」を洗い出すことから始まります。

属人化の解消に取り組んだ実例は[属人化の解消事例]で紹介しています。

具体的な手段として業務のマニュアル化から始めたい方は、[業務のマニュアル化]も参考にしてください。

どこから手をつければいいか迷っているなら、まずは話を聞いてみたい、という方も歓迎です。

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