経営課題のヒント

介護の人手不足はなぜ当たり前?経営者が知るべき本当の原因

青色のTシャツを着た女性が、タブレットとスタイラスペンで業務効率化(DX)に取り組む様子。背景のホワイトボードには、介護業界の深刻な人手不足(有効求人倍率14.14倍)と、業務効率化による定着率向上のメッセージが書かれている。

「また応募がゼロだった」「採用できても3ヶ月で辞めてしまう」。

訪問介護員の有効求人倍率は14.14倍。

いまの介護業界は、採用努力が通じない構造に入っています。

この記事では、介護の人手不足がなぜここまで当たり前になったのか、その本当の原因を経営者視点でお伝えします。

介護の人手不足が「当たり前」になった本当の原因

問題は「労働環境が悪い」のではなく「市場のパイが枯渇した」こと

介護の人手不足は、待遇の悪さや職場の人間関係が原因だと言われ続けてきました。

しかし、最新のデータを見ると、話が変わってきます。

厚生労働省の調査によれば、2025年度の介護職員の平均月給は333,340円。

前年比で約17,000円ものベースアップが実現しました(厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」)。

離職率も12.8%と過去最低を更新し、全産業平均の14〜15%を下回っています(介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」、2025年7月)。

つまり、待遇は改善され、定着率も良くなっている。

それなのに「人が来ない」という現実があります。

原因は単純です。

採用市場の需要と供給のバランスが壊れています。

2025年を境に団塊世代が一斉に後期高齢者となり、要介護認定者が急増しています。

一方で、少子化の進行により新たに介護職に入る人の数はまったく追いついていません。

介護が必要な人は急増しているのに、働ける人の数がまったく追いついていないのです。

数字が証明する「採用の限界」

区分有効求人倍率比較
全職業平均1.22倍基準
介護サービス職業全体3.6倍全平均の約3倍
訪問介護員14.14倍全平均の約12倍

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年12月分)」2026年1月、介護労働安定センター2025年データ

訪問介護員が14.14倍ということは、1人の求職者を14社以上が奪い合っている状態です。

求人広告を増やしても、採用担当者を増やしても、そもそも求職者の数が少なすぎて意味をなしません。

「今いる人が年老いていく」というもう一つの構造問題

さらに深刻なのが、内部の高齢化です。同調査によれば、ケアマネージャーの平均年齢はすでに54.3歳に達し、60歳以上が全体の31.5%を占めています。

介護現場を長年支えてきたベテラン層が、これから定年や体力の限界を理由に、静かに現場を離れていきます。

「若手が辞めていく」のではなく、「屋台骨のベテランが自然に退出していく」。

この自然減が、まさにいま人手不足をさらに深刻にしています。

正直に言うと、「採用頑張ろう」では解決しない時代になっています

相談で多いのが「どの求人媒体を使えばいいですか?」という質問です。

気持ちはわかります。

でも、14倍という数字の前では、媒体を変えることが根本的な解決策にはなりません。

こういうこと、ありませんか?

  • 人材紹介会社に年間何百万円も払ったのに、採用できたのは1〜2人だった
  • 採用コストをかけた人材が半年以内に離職して、また一から求人を出した
  • 求人を出し続けているうちに、残っているスタッフへの負担が増えて、その人まで疲弊してきた

これらは個別の事業所の問題ではありません。

訪問介護員の求人倍率が14倍という市場で採用を続けることの、必然的な結末です。

視点を変えてみると、「採用できないなら、今いる人数でどう回すか」という問いが見えてきます。

記録業務の時間を音声入力で半減する。

シフト作成を自動化して管理者の残業を減らす。

ケアプランの書類作成にAIを活用して、専門職が直接ケアに使える時間を増やす。

これらは今の人員のまま、事業所の実働時間を確保する具体的な選択肢です。

「採用をどう強化するか」と聞かれたら、私は「採用の前に、今いる人が辞めない仕組みを整えることです」と答えています。

過酷な業務量が続く職場から人は離れます。

IT化で業務を軽くすることが、結果的に採用を減らす一番の近道です。

データで見る「採用 vs IT化」のコスト比較

人手不足の深刻度を示す最新統計

厚生労働省「第9期介護保険事業計画」に基づく推計では、2026年度に約25万人の介護人材不足が生じるとされています。

必要数240万人に対して、供給がそれを大幅に下回る見通しです。

賃金面を見ると、2026年度に向けて国は定昇込みで最大19,000円の引き上げ方針を固めています(厚生労働省・社保審・介護給付費分科会、2025年12月)。

国も手を打ち続けていますが、全産業での賃上げが同時進行しているため、介護が他業種に対して特別に有利にはなっていないのが現実です。

特定技能外国人材については、2025年4月から訪問介護への従事が解禁されました(出入国在留管理庁、2025年)。

これは選択肢の一つですが、言語や文化の壁があり、単独で訪問させるには準備と仕組みが欠かせません。

「人が来た」で終わりではなく、受け入れ体制を整えて初めて機能します。

採用コストとIT化コストの比較

経営者が最も知りたいのは「数字として、どちらが得か」だと思います。

比較項目採用で解決する場合IT化で解決する場合
初期コスト人材紹介手数料 80〜120万円/人システム導入費 30〜80万円(初回のみ)
月次コスト給与・社会保険料 35〜45万円/月月額サブスク 3〜10万円
業務削減効果即戦力まで3〜6ヶ月導入後すぐに記録・書類作業を削減
リスク定着しなければゼロに戻る解約しない限り効果が継続

1人採用するために年間100万円以上を使い、3ヶ月で離職した場合、その費用はすべて無駄になります。

同じ予算を記録のデジタル化や業務自動化に投じれば、その効果は翌年も、その次の年も続きます。

「採用コストを使い続けて疲弊するのか、今いる人が長く働ける仕組みに投資するのか」。

どちらを選ぶかは経営者の判断ですが、私は後者をおすすめします。

まとめ

介護の人手不足が「当たり前」になった本当の原因は、待遇や離職率の問題ではありません。

高齢化で介護を必要とする人が急増する一方、少子化で働ける人が減り続けている。

この二重の構造問題です。

訪問介護員の求人倍率14.14倍という数字が、それを端的に示しています。

加えて、現場を支えてきたベテランの自然退出が、今後さらに人手不足を深刻化させます。

採用をいくら頑張っても構造は変わりません。

経営者に必要なのは「今いる人で、どう回すか」という視点への切り替えです。

記録業務の効率化、シフト管理の自動化、書類作成のAI活用。

採用費を使い続けるより、今いるスタッフが長く働ける仕組みに投資することが、介護経営を持続させる現実的な選択肢です。

まずは話を聞いてみたい、という方も歓迎です。

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