「このままで大丈夫だろうか」と感じている介護事業所の経営者は、多いはずです。
2025年、介護事業者の倒産は176件と2年連続で過去最多を更新しました。
しかも倒産とは別に、自主的に廃業・解散した事業所は653件。
合わせると、1年間で829件の介護事業所が消えた計算です。
この記事では、閉鎖に至る原因を整理した上で、今いる人員のまま事業を続けるための具体的な手立てをお伝えします。
介護事業所の倒産が止まらない本当の理由
倒産が増えている理由を「人手不足のせい」と片付けてしまうと、対策を間違えます。
実際には、複数の問題が同時に重なって事業所を追い詰めています。
訪問介護に被害が集中している
2025年の倒産176件のうち、訪問介護だけで91件。
全体の半数以上を占め、3年連続で最多を更新しています(東京商工リサーチ、2026年1月)。
これには明確な理由があります。
訪問介護は「1人のヘルパーが1人の利用者のもとへ移動してサービスを提供する」形態です。
ヘルパーが1人休んだだけでサービスを回せなくなり、新規の依頼を断らざるを得ない。
断れば売上が落ちる。
売上が落ちても介護報酬は公定価格なので値上げできない。
この悪循環が、資金繰りを追い詰めます。
報酬改定の効果がコスト上昇に食われている
2024年度の報酬改定は全体で1.59%のプラスでした。
しかし2025年の調査では、全事業所・施設の37.5%が依然として赤字に陥っています(厚生労働省、2025年11月)。
プラス改定の効果は、物価高騰と光熱費の上昇に相殺されています。
倒産原因を細かく見ると、「売上不振」が140件(全体の79.5%)でトップ。
次いで「人手不足」による倒産が29件で、前年比45.0%増と過去最多を記録しています。
そのうち15件は求人そのものができずに廃業に追い込まれた「求人難」が直接原因です(東京商工リサーチ、2026年1月)。
倒産より深刻な「静かな廃業」
見逃せないのは、倒産(176件)の3.7倍に上る653件が「休廃業・解散」という形で事業を畳んでいる点です。
そのうち訪問介護だけで465件(全体の約7割)を占めます(東京商工リサーチ、2026年1月)。
倒産は債務超過になってから起きますが、休廃業は資産が残っている段階での自主的な撤退です。
「これ以上続けても先が見えない」と判断した経営者が、体力が残っているうちに事業を閉じている。
表に出る倒産件数の何倍もの規模で、介護の供給基盤が静かに崩れています。
正直に言うと、採用で乗り越えようとしている限り閉鎖は避けられません
耳が痛い話ですが、私が相談を受ける中で一番多く聞くのが「求人を出しても全然来ない」という言葉です。
こういうこと、ありませんか?
- 求人媒体に月10万円以上かけても応募がゼロ。ハローワークでも「介護職は本当に動きが少なくて」と言われた
- 人材紹介で来た方が半年で辞め、紹介手数料50万円がそのまま消えた
- 「誰でもいいから」と焦って採用したら、既存スタッフとの関係が悪化した
これは経営者の努力不足ではありません。
市場そのものが壊れています。
訪問介護員の有効求人倍率は14.14倍という異常な水準に達しています(2025年データ)。
全職業平均が1.20倍ですから、10倍以上の格差です。
つまり、1人の求職者を14の事業所が奪い合っている状態です。
この市場で、専任の採用担当者も採用予算も持てない小規模事業所が競争に勝てる確率は、正直、ほぼゼロです。
「どう採用するか」ではなく「今いる人員でどう回すか」。
この切り替えができた事業所だけが、生き残る時代です。
「他に手はないですか?」と聞かれたら、私は「あります」と答えています。
ICT化で業務時間を減らし、今いるスタッフが続けやすい職場にすることです。
データで見る「採用 vs IT化」のコスト差
経営判断の材料として、数字を整理します。
介護事業所を取り巻く最新データ
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 2025年介護事業者倒産件数 | 176件(過去最多) | 東京商工リサーチ(2026年1月) |
| 2025年介護事業者休廃業・解散 | 653件(過去最多) | 東京商工リサーチ(2026年1月) |
| 赤字事業所の割合 | 37.5%(3事業所に1つ) | 厚生労働省(2025年11月 |
| 訪問介護員の有効求人倍率 | 14.14倍 | 厚生労働省推計(2025年) |
| 2026年度に不足する介護職員数 | 約25万人 | 厚生労働省推計 |
| 2040年度に不足する介護職員数 | 約57万人 | 厚生労働省推計 |
2026年度の25万人不足は、いま目の前にある現実です。
2040年には57万人に拡大します。採用市場はこれからさらに厳しくなります。
さらに深刻なのは、2023年10月時点で介護職員の総数が前年から2.9万人「減少」に転じたことです。
介護保険制度が始まって以来、初めての減少でした(厚生労働省、2026年言及)。
年間6万人増やす必要がある中で、逆に減っています。
採用コストとIT化コストの比較
| 比較項目 | 採用で解決 | IT化で解決 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 紹介手数料50万〜100万円 | 補助金活用で実質0〜数万円 |
| 月額コスト | 求人広告費5〜10万円(継続) | クラウド介護ソフト月1.8万円程度 |
| 効果の確実性 | 来るかどうかわからない | 月40時間削減(導入事例あり) |
| リスク | 早期離職で全額消える | システムは辞めない |
| 補助金 | なし | 最大250万円(補助率最大3/4) |
クラウド型介護ソフトを導入した小規模事業所では、ケアプラン作成や記録業務の時間が月40時間(約40%)削減された事例があります(2025〜2026年、介護関連メディア)。
時給1,500円で換算すると月6万円の人件費相当。
しかも月1.8万円程度のIT投資は、導入初月から採算が取れる計算になります。
さらに、2025年度の介護テクノロジー導入支援事業(国の補助金)では、介護ソフト導入に対して規模に応じ100万〜250万円の補助が出ます(補助率は通常1/2、要件を満たせば3/4)(厚生労働省・各自治体、2025年)。
この補助金を使えば、実質的な自己負担は極めて小さくなります。
2026年の報酬改定は踏み絵になる
もう一つ知っておいてほしいことがあります。
2026年度に臨時の介護報酬改定が実施されます。
改定率はプラス2.03%で、単年度としては過去最高水準です(厚生労働省・GemMed、2026年1月)。
職員へのベースアップは「月額1万円」です。
加えて、生産性向上の取り組み(ICT活用やデータ連携システムの導入など)を満たした事業所には「月額7,000円」の上乗せがあります。
最大で月額19,000円の賃上げが実現します。
逆に言えば、IT化に取り組まない事業所は最大ランクの加算を取れません。
他社が19,000円の賃上げを実現している中で、自社が12,000円程度にとどまれば、有効求人倍率14倍の超売り手市場で職員が流れていきます。
一人の退職が連鎖退職を引き起こし、そのまま廃業へ直滑降するルートです。
2026年の改定は、ICT化を進めるかどうかの踏み絵として機能します。
まとめ:閉鎖を防ぐための選択肢は残されています
介護事業所の倒産が過去最多を更新し、廃業を含めれば1年間で800件以上が市場から消えました。
その中心にいるのは従業員10人未満の小規模事業所です。
売上不振と人手不足が同時に経営を圧迫し、採用市場は訪問介護員の有効求人倍率14.14倍という機能不全に陥っています。
この状況で「もっと求人を出そう」では、打ち手が足りません。
今いる人員で月40時間の間接業務を削減する。
記録や連絡をデジタルに変えることで、スタッフが続けやすい職場をつくる。
2026年の報酬改定で上乗せ加算を取り、賃上げ原資を確保する。
この順番で考えると、生き残る道が見えてきます。
どこから手をつければいいかわからない、という方も歓迎です。
オンラインで60分、あなたの事業所の状況をお聞かせください。
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