求人レポート

中小企業が賃上げできない5つの理由と、倒産を防ぐ処方箋【2026年最新】

2026年、中小企業の賃上げ困難な現状と決意。夕暮れの町工場で、賃上げ・価格転嫁資料と経営分析タブレットを手に遠くを見つめる、冷静で決意を秘めた女性経営者

中小企業が賃上げできない理由は5つの構造問題にある。①価格転嫁率が3.8%で原資を作れない、②大企業との格差が固定化(5.33% vs 実質3%台)、③68.8%が業績改善なき防衛的賃上げ、④最低賃金の年7.3%引上げ圧力、⑤賃上げしなければ人が辞め経営が悪化する負の連鎖。人件費高騰倒産は3年で22倍に急増しており、「採用以外の打開策」を持てるかが生存の分岐点になっている。

「賃上げしてください」と言われる。でも、原資がどこにもない。

2026年、多くの中小企業の経営者が直面しているのはそういう状況だ。

大企業が5%超の賃上げを連発するニュースを横目に、「うちには無理だ」と感じながらも、賃上げしなければ人が辞める。

賃上げすれば資金が尽きる。

そんな袋小路に追い込まれている。

実際、人件費高騰を原因とする倒産は、2022年の7件から2025年には152件へと、わずか3年で22倍に膨らんだ(東京商工リサーチ、2026年1月発表)。

2026年1月単月だけで見ると、前年同月比3.1倍という異常な急増ぶりだ。

なぜ中小企業は賃上げできないのか。

そして、どうすれば乗り越えられるのか。

5つの構造的な理由と、採用以外の打開策を整理する。

理由1:賃上げ原資を作る「価格転嫁」が機能していない

賃上げの原資は、利益から生まれる。

利益を増やすには、コスト増加分を売値に転嫁しなければならない。

しかし現実は厳しい。

コストの増加分を完全に(10割)価格転嫁できている企業は、全体のわずか3.8%だ(日本商工会議所LOBO調査、2025年10月)。

労務費に絞ると、転嫁率は32〜50%にとどまる(帝国データバンク・中小企業庁、2025年調査)。

つまり、賃上げしても、そのコストを売値に乗せられていない企業が圧倒的多数だ。

価格転嫁が進まない理由は単純で、「取引先から断られるから」「競合に仕事を取られるから」という力関係の問題だ。

特に下請け構造の深い業種ほど転嫁が難しく、運輸・建設・医療福祉は全業種の中でも最も低い水準にある。

実際に聞いた話だが、広告代理店の下請けでWeb制作をしている会社が、時間単価を10%上げてもらう交渉をした。

たった10%だ。

それでも難航した。「嫌なら他に頼む」と言われるリスクを抱えながらの交渉は、数字以上に経営者を消耗させる。

→ 詳しくは:価格転嫁できない中小企業が9割超の現実

理由2:大企業との賃上げ格差が固定化されている

2025年春闘の結果、大企業(300人以上)の賃上げ率は5.33%、中小企業(300人未満)は4.65%だった(連合、2025年7月最終集計)。

0.68ポイントの差は小さく見えるが、問題は「縮まっていない」ことだ。

さらに深刻なのは、連合の集計対象が労働組合のある企業に限られるという点だ。

従業員99人以下の企業の労組組織率はわずか0.7%(厚生労働省、2024年)。

労組のない中小企業の実態の賃上げ率は、さらに低い。

2026年春闘で連合は中小企業に「6%以上」の賃上げを求めている。

しかし5%以上の賃上げを「予定している」中小企業は35.5%にすぎない(東京商工リサーチ、2026年2月)。要求と現実の間に、大きな断絶がある。

相談で見えてくるのは、「うちも5%出したい、でも出せない」という声だ。

問題は意欲ではなく、売上の入口が限られていること。

賃上げ原資は、採用コストを削減して売上を伸ばす仕組みを作ることでしか生まれない。

→ 詳しくは:大企業と中小企業の賃上げ格差が広がる理由【2026年春闘】

理由3:業績が改善していないのに賃上げを強いられている

中小企業が賃上げする理由のトップは「従業員の離職防止(77.5%)」だ(東京商工リサーチ、2025年2月)。

「業績向上分の還元」はわずか33.3%、「業績見通しの好転」に至っては7.6%にすぎない。

つまり、儲かっているから上げるのではなく、辞められたくないから上げている。

これが「防衛的賃上げ」の実態で、2025年12月時点では中小企業の68.8%がこの状況にある(日本商工会議所、2026年2月)。

業績が改善しないまま人件費だけが増えれば、いずれ限界が来る。

「賃上げ疲れを感じている」と回答した企業はすでに77%に達している(エデンレッドジャパン、2025年)。

この「防衛的賃上げ」の怖さは、経営者自身が「いつまで持つかわからない」と感じながらも止められない点にある。

止めた瞬間に人が辞める。

だから続ける。

しかし業績が追いつかなければ、次は会社そのものが持たなくなる。

→ 詳しくは:人件費高騰倒産が前年の3倍に【2026年1月最新】

理由4:最低賃金の引き上げが「強制賃上げ」として機能している

春闘とは別に、最低賃金の引き上げが毎年秋に発動される。

2025年度の最低賃金は全国加重平均1,121円(前年度比+66円、引き上げ率6.3%)で、全都道府県が初めて1,000円を超えた(厚生労働省、2025年9月)。

政府は「2020年代中に全国平均1,500円」という目標を掲げており、達成には毎年7.3%程度の引き上げが必要だ。

この目標に「対応できない・困難」と答えた中小企業は74.2%にのぼる(日本商工会議所、2025年3月)。

7.3%の引き上げに「対応可能」と回答した企業は、わずか1.0%だ。

賃上げが「したい」ではなく「しなければならない」構造になっている。

最低賃金の改定に対応した企業のうち、「具体的な対応が取れず収益を圧迫している」が31.4%で最多という現実がある。

相談で多いのが「どの求人媒体を使えばいいか?」という質問だ。

しかし有効求人倍率が介護で14倍、建設で5.3倍を超える状況では、媒体を変えても焼け石に水だ。

月10万円以上の求人費で応募ゼロのケースも珍しくない。

最低賃金をクリアしているかどうかより、「人を増やす以外の選択肢を持っているか」が本質的な問いになっている。

→ 詳しくは:最低賃金1500円に74%の中小企業が対応不能【調査】

→ あわせて読む:最低賃金1,500円時代、中小企業はどう生き残るか

理由5:賃上げできないと人が辞め、さらに経営が悪化する

賃上げを見送った企業で何が起きるか。答えはシンプルで、従業員が辞める。

2025年の人手不足倒産397件のうち、「従業員退職」を直接の原因とするものが前年の1.5倍に増加した(東京商工リサーチ、2026年2月)。賃金が大企業より低い企業から、優秀な人材が流出していく。人が抜けると業務が回らなくなり、売上が落ちる。売上が落ちると、さらに賃上げが難しくなる。この負の連鎖が、「賃上げ疲れ倒産」の正体だ。

特に中小企業において、有資格者や熟練の営業担当が1人辞めるだけで、事業継続が困難になるケースは後を絶たない。

従業員10人未満の小規模企業が人手不足倒産全体の77%を占めているのは、そのためだ(帝国データバンク、2026年1月)。

相談で多いのが「担当者が辞めてから初めて困った」というパターンだ。

管理表を作った人が退職して、数式の意味を誰も理解できない。

引き継ぎ書もない。

こうした「属人化リスク」は、辞める前は表面化しないからこそ、誰も気づかない。

では、どうすればいいのか

賃上げの連鎖から抜け出すには、「人を増やす・給料を上げる」以外の選択肢を持つことが必要だ。

具体的には2つの方向がある。

1つは「業務の自動化で、既存の人員でより多くの仕事をこなせる仕組みを作る」こと。

事務処理や報告業務などの定型作業を自動化できれば、人件費を増やさずに生産性を上げられる。

結果として賃上げの原資が生まれやすくなる。

もう1つは「ホームページを営業マン代わりにして、問い合わせを増やす」こと。

営業担当を採用・維持するコストは年間550万円以上かかる。

ホームページが24時間稼働して問い合わせを取ってくれれば、採用コストをかけずに売上を伸ばせる。

賃上げ問題の本質は、「人件費が上がる速度」と「売上・生産性が上がる速度」のギャップだ。

採用で解決しようとすればコストが重なるだけだが、ITや仕組みで解決すれば、そのギャップを縮めることができる。

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