「求人を出しても来ない。来ても続かない。現場が回らなくなってきた」。
建設業の経営者からよく聞く言葉です。
インフォマートの調査(2025年4月)によると、建設業の就業者の62.1%が「2025年問題」を深刻と感じています。
にもかかわらず、43.8%が「特に何も取り組めていない」と回答しています。
この記事では、採用活動の前に着手すべきIT活用の3つの手順と、その具体的な理由をお伝えします。
建設業の人手不足対策、何から始めればいいのか
結論から言うと、先にIT化で「今の人数で業務が回る仕組み」を作ってから採用に動く。
この順序が重要です。
本記事では、やるべきことを3つに絞ります。
その1:施工管理アプリで現場の事務時間を削る
電話での進捗確認、現場から事務所に戻っての報告、デジカメで撮った写真をExcelで台帳に貼り付ける作業。
これらは全て、IT化できる定型業務です。
クラウド型の施工管理アプリ(Photoructionなど)を導入すると、現場監督がスマートフォンで撮影した写真がその場で事務所と共有されます。
事務員は写真を集める作業がなくなり、現場監督は「確認のために事務所に戻る」移動時間がなくなります。
実際に従業員50〜100名規模の中小ゼネコンでは、施工管理クラウドの導入により現場所長の月間残業が約10時間削減されたという事例があります(Photoruction導入事例、2026年)。
「月10時間」と聞くとピンとこないかもしれませんが、週2〜3時間分の事務作業がなくなるということです。
その時間が安全管理や若手の指導に使えるようになります。
その2:工程管理クラウドで「確認の電話」をゼロにする
「今どこまで進んでいる?」の電話を、1日に何本かけていますか。
建設現場では、進捗確認がその場その場の電話頼みだと、作業中断が頻発します。
工程管理クラウドを使うと、進捗状況・図面・連絡事項が全員が見られる一箇所に集まります。
管理者は自分のタイミングで現場の状況を確認できます。
現場の作業員も、手を止めて電話に出る必要がなくなります。
インフォマートの調査(2025年4月)によると、建設業の3〜4割の企業が発注書・契約書・請求書・図面の受け渡しを依然として「紙で行っている」と回答しています。
この割合は2024年より増加しているという逆行現象です。
紙に頼り続けると、確認のための連絡コストが事務員の固定費として経営を圧迫します。
| 業務 | 現状(アナログ) | IT化後 |
|---|---|---|
| 写真管理 | デジカメ撮影 → PC取込 → Excel台帳 | スマホで撮影 → クラウド自動整理 |
| 進捗確認 | 電話・現場往来 | クラウド上で共有 |
| 日報提出 | 紙記入 → 事務所持参 | スマホアプリで送信 |
| 図面共有 | 印刷・現場配布 | アプリで全員即時閲覧 |
その3:IT導入補助金で初期費用のハードルを下げる
「ツールを入れたいが、タブレットを現場に何台も買う予算がない」。
これは実際によく出る話です。
2026年度から、IT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変わり、2026年2月27日から公募が開始されています(補助金ポータル、2026年2月)。
建設業は資本金3億円以下または常勤従業員300人以下であれば対象となります。
特に使いやすいのが「インボイス枠」です。
インボイス制度に対応した受発注ソフトや会計ソフトを導入する際に、ソフトウェアとセットでPCやタブレットの購入費も補助対象となります(最大10万円、補助率1/2以内)。
現場配布用のタブレットを国の補助金で半額にできるということです。
正直に言うと、採用の前にやることがあります
正直に言うと、採用活動を優先させている建設業の経営者ほど、数年後に追い詰められるケースが多いと私は見ています。
相談で多いのが「求人に費用をかけてもすぐ辞める。また採用費が出ていく」という話です。
こういうこと、ありませんか?
- 朝礼が終わったら現場に出て、夕方には日報と写真整理で残業。現場監督が疲弊して辞めた
- 「うちは週休2日にできない」と言い続けているうちに、採用面接で他社に負けるようになった
- 事務員が辞めたら他の誰も請求書の処理ができず、社長自身が夜中に対応することになった
これらは全て、業務の仕組みがアナログなまま人を増やそうとした結果です。
穴の空いたバケツに水を注ぐような採用活動を続けていても、状況は変わりません。
インフォマートの調査では、若手を確保するために経営者が必要と感じている施策のトップが「給与等の労働条件の見直し(34.0%)」です。
しかし、IT化が遅れて高い事務コストに利益が圧迫されている状態では、給与を上げる原資がありません。
まず仕組みを変えて利益を作り、それを待遇改善に使う。
その順序でないと採用は改善しません。
「採用より先にITを導入するべきですか」と聞かれたら、私は「少なくとも、採用と並行して仕組みを作らないと、採用した人を定着させられません」と答えています。
データで見る「採用 vs IT化」の現実
クラフトバンク総研「2026年建設業界動向予測」(2025年12月)によると、建設業の就業者の5人に1人(約20%)が事務員です。
会社の規模が小さいほどデジタル化が遅れており、一人の事務員がカバーできる現場社員の数が少なくなっています。
つまり、小さな会社ほど事務の固定費が利益を圧迫しているということです。
国土交通省の「i-Construction 2.0」(2025年4月)では、2040年度までに建設現場の省人化を3割以上(生産性を1.5倍)向上させる目標を掲げています。
2025年度からは、IT人材がいない中小企業向けに「自動施工コーディネーター」の育成プログラムも始まりました。
「社内にITがわかる人がいない」という壁は、国の施策で解消が進んでいます。
2025年度のIT導入補助金では、建設業の採択率は約36.5%(申請433者・採択158者)でした(補助金ポータル、2025年)。
採択されなかった6割の共通点は、「この導入で労働生産性がどう変わるか」という事業計画が描けていないことです。
| 比較項目 | 採用で解決 | IT化で解決 |
|---|---|---|
| 初期コスト | 採用費用30〜80万円/人 | ツール導入10〜50万円(補助金活用で半額以下) |
| 効果が出るまで | 即戦力まで1〜3年 | 導入後3〜6ヶ月で定常化 |
| リスク | 早期離職で費用ゼロに | ツールは辞めない |
| 固定費の変化 | 人件費が増加する | 事務コストが下がる |
| 採用市場での競争力 | 労働環境が変わらなければ変化なし | 残業削減・週休2日が訴求できる |
一人採用すると人件費・社会保険料を含めて年間400〜600万円の固定費が増えます。
一方、施工管理アプリの年間費用は5〜30名規模の企業なら月3〜10万円程度です。
IT化で事務員1名分の業務を削減できれば、その固定費軽減額だけで複数のITツールの費用を賄えます。
まとめ
建設業の人手不足対策は、採用活動を止める話ではありません。
ただ、採用より先に「今の人数で業務が回る仕組み」を作らないと、採用しても定着しないという悪循環が続きます。
手をつけるべきは3つです。
施工管理アプリで現場の事務時間を削ること、工程管理クラウドで確認の電話をなくすこと、デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠でタブレットごと補助を受けること。
この3つを先に実行すれば、採用した人が定着できる環境が整います。
まずは話を聞いてみたい、という方も歓迎です。
オンラインで60分、あなたの会社の状況をお聞かせください。
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